「二重行政の無駄」を疑え!

大阪府知事市長ダブル選の投票日が、明日に迫った。
大阪都構想の是非が争点となっているが、「大阪の再生には都構想実現
しかない」と議論が単純化されているのが非常に気になる。
大阪府・市の赤字財政の原因が「二重行政の無駄」だけだとはとても
思えず、都構想にかけるカネがあるならさっさとバブル期の「負の遺産」を
処分して欲しい
と思う。
そもそも「二重行政の無駄」というのが、フレーズとしては理解出来るが
実態がどうなっているのかさっぱり分からない。
確かに相応のコストはかかっているだろうが、億単位の予算をかけて
行政システムを変革しなければならないほどのものなのだろうか。


実は維新は都構想に先駆けて、「二重行政の無駄」を解消する、という
名目である「変革」を既に行っている。
それが大阪市立住吉市民病院の閉鎖である。
この病院は101床の小児科と産婦人科を有していただけであったが、
10代のシングルマザーや未受診妊婦の出産など福祉的ニーズの高い
ケースを積極的に受け入れ、家族付添いなし入院や重症心身障害児の
短期入所の機能を併せ持っていて、社会的に弱い立場にある市民に
とっては、なくてはならない医療機関だった。
廃止された理由は、2キロ東に大阪府立急性期・総合医療センターが
あったためである。
近接した地域に、市立と府立の医療機関が存在するのは
「二重行政の無駄」だ、という理屈
だった。


しかし、市民は不便を強いられることになった。
同センターには母子医療センターが新設されたが、住吉市民病院と
同等の福祉的機能はない。
重症心身障害児の短期入所には46人が登録しており、
2017年度は延べ510日利用されていたが、住吉市民病院閉鎖後は
同センターに1床、都島区総合医療センターに1床で受け付けられるのみ
となり、設備上の大きな不安が残った。
そもそも、東西の交通の便が悪い地域では、妊婦や子供を連れた母親が
2キロの距離を移動するのは大変な負担である。


当然のごとく市民からは「閉鎖反対」の声が上がり、市議会では
2013年3月に「跡地に民間病院を誘致する」という付帯決議を可決した。
ところが、市長の吉村洋文は3度にわたって誘致に失敗
代わりに大阪市立大学医学部付属病院を跡地に誘致する方針を示すが、
まだ結論は出ていない。
暫定的に「市立住之江診療所」が開設されはしたが、外来のみで入院や
短期入所のニーズには対応できない。
つまり、市民にとって非常に大切な医療機関が、「二重行政の無駄」という
理屈で一方的に閉鎖され、その後のニーズを穴埋めできずにいるのだ。

(以上、維新政治の失敗〜住吉市民病院〜 | 都構想ポータル|立憲民主党大阪府連
参照 )



そもそも市民の健康や生命を守る病院を、そんな簡単に閉鎖して
よいものだろうか。
「二重行政の無駄」を謳うのはよいとしても、その矛先がまず公共施設に
向くというのはどういうスタンスなのだろうか。
そして橋下徹の「官より民」というスローガンに染まりつつも、
それが全く容易なものではない、ということも実証されている。


公共施設にメスを入れる、という意味においては、大阪府立大学
大阪市立大学の統合
も気になるところだ。
少子化で学生数が減少しており、大学の統合は現在の潮流であるため、
こうでもしないと府大と市大が共倒れになりかねない、という指摘は
存在する。
しかし、そもそもはやはり「二重行政の無駄」という観点から、
2つの大学に補助金を拠出することを見直すために、統合という方策が
打ち出されたのである。
特に大阪市立大学は、あの五代友厚を始めとする大阪の財界人が
中心となって創設された「大阪商業講習所」に端を発し、
旧三商大」として名を連ねる「旧制大阪商科大学」へと発展した歴史
がある。
このような伝統ある教育機関を、かくも簡単に統合して名を無くしても
よいものだろうか。


どうも「二重行政の無駄」を掲げて行われる「変革」は、
目に見えて分かりやすいところにばかり矛先を向けているように思える。
「官」に対する不信というものが定着してしまったばかりに、
公共施設も無駄を抱えているもの、というイメージに乗っかり、
市民受けする「変革」に打って出ているのではないだろうか。
しかし、そこを必要としている当事者にとってはたまったものではない。
内実を無視し、「無駄を排する」というパフォーマンスに走っている、
と疑ってしまう。


もし本当に「二重行政の無駄」を解消するというのであれば、
それは市民の目に見えづらい「地道な改善」から進められるはずだ。
安易に大なたを振るう行政には、大いに警戒すべきだろう。