「共謀罪」は国民全般を支配する

共謀罪」という戦後最悪の法律が、法務委員会を省略するという
最低の手段で強行採決された。
海外では「今の日本は大丈夫なのか」と訝しく見られているだろう。
国民はともかく、中央政府のやっていることは中国や北朝鮮と同じだからだ。

共謀罪」についての知識を得るために、絶好のテキストが出版されていた。
京都大学法科大学院教授の高山佳奈子氏が著した『共謀罪の何が問題か』
(岩波ブックレット)である。

共謀罪の何が問題か (岩波ブックレット)

共謀罪の何が問題か (岩波ブックレット)

今年の5月19日に緊急出版されている。
政府の説明がデタラメばかりで、マスコミも問題点についてほとんど
報道しない(真剣に取り組んでいるのは「報道ステーション」ぐらい)ので、
高山教授としては相当に危機感が募っていたのだろうと推察される。
とにかく一人でも多くの国民に読んでもらい、正しい知識を得てほしい、
という思いが伝わってくる。
平易な文体を用い、分量71ページに絞り、価格を580円+税に抑えたのも
そういった思いからだろう。

これは全国民、必読である。
「自分には関係ない」と言い切れる国民は、
存在しない。

あるネトウヨは、ヤフコメ欄で
「まあ、悪いことをしなければそれでいいのだろう」
と書いていた。
こういうのを「頭の中がお花畑」という。
私は「脳内フローラ」と表現している。
政治権力と警察権力の恐ろしさが分かっていない。

ネトウヨの星・百田尚樹
「右派は共謀罪の取り締まりの対象にならない」
と思い込んでいるらしい。
そんな貧相な想像力で、よく作家稼業が務まるものだ。
本書の中には、右翼組織のメンバー20名が「道交法違反」で一斉に摘発され、
免許停止処分を受けた例が挙げられている。
警察にとって、左右の立場は関係ないし、政治思想の有無自体も関係ない。
共謀罪」の法の下に国民を取り締まることが出来るのであれば、
それ自体は「公務」なのだから、堂々と権力を発揮することだろう。

また、あるネトウヨは、やはりヤフコメ欄でこのように書いている。
「野党は重箱の隅をつつくばかり。対案を出さなければ議論にならない」

議論を拒否しているのは、バカネダこと金田勝年を法相辞任させない
政府の方なのだが、それは置いておく。

この「共謀罪」においては、対案など存在しない。
何故ならば、テロ対策もTOC条約締結も現行法で
充分可能だからだ。

そもそも自民党法務部会長の古川俊治は、
「テロ等準備罪の目的は、テロ対策ではない。TOC条約締結だ」
と『羽鳥慎一モーニングショー』の「そもそも総研」のコーナーで
明言していた。
実際に、共謀罪」の条文には「テロ」「テロリズム」という文言は
一切含まれていない。

よって、イギリスやフランスで発生したようなテロが起きたらどうするの?
という批判は、「共謀罪」の議論においては全く意味を成さない。

そして、TOC条約締結に関しては、ニコス・パッサス教授が執筆した
「立法ガイド」において、以下のように「共謀罪立法は不要」と
明記されている。
「(前略)共謀罪および結社罪のいずれの制度も導入することなしに、
組織的犯罪集団に対して有効な措置を講ずることを認める余地がある

つまり、現状維持が最適な選択肢なのである。

現状で何ら不都合が生じていないのに、政府は勝手に「共謀罪」を立法して
警察権力を強化しようとしているのだ。

ちなみに「共謀罪」の対象犯罪として、権力側に係る法や犯罪が、
ことごとく除外されている
ことは強調しておく。
例えば警察による「職権乱用罪・暴行陵虐罪」は含まれていない。
また、公職選挙法政治資金規正法、政党助成法、最高裁裁判官国民審査法
に関する違反も含まれていない。
組織的経済犯罪を念頭に置けば、当然対象になり得るはずである
たばこ税法石油石炭税法石油ガス税法航空機燃料税法揮発油税法
の脱税の罪も、何故か対象外である(所得税法法人税法消費税法は対象)。
相続税法独禁法も対象外。
見事に権力者、富裕層、大企業にのみ都合の良い構成になっているのだ。

ネトウヨは無知だから、いまだに共謀罪」は「左翼を取り締まる法律」
だと考えている。
安倍晋三を始めとする権力者は、右翼は大目に見てくれるはず、という
根拠のない思い込みを抱いている。
元々は「アカ狩り」が目的だった「治安維持法」も、「体制批判=アカ」
「言論人=アカ」「作家=アカ」「米国帰り=アカ」と一気に範囲が拡大
して
何でもありになってしまったではないか。
権力者は、滞りなく国民を支配できればそれでよいのだ。
左右関わらず、面倒な人間はパクってしまうのが最も楽なのである。

奇しくも、元TBS記者の山口敬之準強姦罪に問われ、逮捕状が出ていたにも
関わらず、「上からの命令」で所轄の捜査員は逮捕できなかった、という
事実が明るみとなった。
週刊誌記事によると、かつて菅義偉の秘書官を務めていた警察官僚の
中村格の指示だという。
これこそ、警察と安倍政権がつながっている、という何よりの証拠である。
今後は、安倍政権にとって都合の悪い組織や団体が、「共謀罪」の名目で
摘発されるかもしれない。

憤りながらいろいろと書いたので、ややまとまりを欠く文章になってしまった。
本来は、上で挙げた著書の中身にもう少し触れて、如何に政府が嘘ばかり
ついているか、はっきり書きたかったのだが、それは次回へ。

あと、権力監視の自覚がないマスコミや、責任感のかけらもない
ワイドショー出演者の批判を、次々回に書く。