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「北の脅威」について考えるは自主防衛

16日放送の「ワイドナショー」に出演していた国際政治学者・三浦瑠璃氏の
コメントが面白かった。
連日マスコミで報道されている北朝鮮情勢について、「何を今になって
騒いでいるのか」と皮肉っていた。
金正恩体制の危うさは以前からずっと続いてきたことであり、
三浦氏は「北は既に核武装している」と既に明言していたそうだ。
つまり、危機的状況の水位が急に著しく高くなったということではない、
という見方であるようだ。

これには非常に納得出来る。
北朝鮮が核実験を行ったりミサイルを発射したりといった軍事行動において、
明確な予兆が見受けられたわけではない。
強いて言えば、国家的な記念日が集中する4月に何らかの動きがあるのでは
ないか、と推測できる程度である。
それ以外の要因、例えばここ数年間の北朝鮮の動きなんかをわざわざ
おさらいしたところで、何かが見えてくるわけではない。
様々な要因が絡んだ上で、ボタンが押されてしまうか、北朝鮮が壊滅するか
の二者択一状態は、今に始まったことではないのだ。

こうした冷静な判断の出来る専門家の見解に基づくものでなければ、
北朝鮮情勢の報道はいたずらに視聴者の不安を煽るだけのものに
なってしまうだろう。
安倍晋三の「サリン搭載ミサイル」発言にいちいち付き合っている場合
ではない。

しかし、現に日本はあらゆるリスクに直面しているのだから、
それを報道する意味はあるだろう、との反論は予想される。
そういった方にお聞きしたいのは、敵についての情報ばかりかき集めて
何になるのか、ということだ。
己の現状についてきちんと認識しているだろうか。

私がこの件で最も知りたいのは、安保法制との兼ね合いがどうなるのか、
ということだ。
アメリカの空母、カール・ビンソンが朝鮮半島に接近しているという。
もし、この空母が北朝鮮から何らかの攻撃を受けた場合、集団的自衛権
行使されることになるのだろうか。

2015年の安保法案国会で安倍晋三は「アメリカのイージス艦が他国から
攻撃された場合、日本国の存立危機事態となって、アメリカの後方支援を
行えるようになる」といった説明をしていたように思う。
カール・ビンソンはイージス艦ではないが、状況は同じ事だろう。
日本の領土は何ら被害を受けていなくても、アメリカ軍が被害を受けた
だけで「日本の存立危機事態」と見なす、という安保法制の大きな矛盾点

一つが現実化するかもしれない。

本来ならば米朝対立だけで済んでいた所に、わざわざ日本が「我々は
アメリカの同盟国なので、自国の秩序を護るためにアメリカに協力して
北朝鮮に対抗する」と宣言して、自衛隊を派遣するのだろうか。
中立の立場をとっていれば、何のリスクを背負うこともなかったかも
しれないのに、敢えて北朝鮮の標的になるような行動に出るのだろうか。

これはあくまで基礎知識だが、国際法上「後方支援」という専門用語は
存在しない。

日本の官僚か学者が造った四字熟語に過ぎず、「後方支援」をしているだけ
だから自衛隊は攻撃対象にならない、ということではない。
弾薬や燃料の供給であっても、それは立派な「戦闘行為」と見なされる。
よって、北朝鮮自衛隊へ攻撃しても、国際法違反には当たらない。
しかし、自衛隊は「攻撃を受けるまでは何も出来ない」という制限が
存在することは留意しておかなければならない。
あと、「存立危機事態」というのも、シンプルに外国語に訳出できない
造語であったような気がする。
要するに、「存立危機事態」なのだから「後方支援」した、といっても
国際的には理解されないのだ。

己の現状、とはこういうことである。
安保法制という大きなリスクを己の内に抱え込んでしまっているのだ。
金正恩もトランプも不安定要素ではあるが、それらに受動的に左右され
なければならない立場に日本を追いやっているのが、安保法制なのである。

マスコミは、この問題についてきちんと報じなければならないのではないか。
2015年にあれだけ安保法制の危険性について議論していたのだから、
想定しうる事態に以上のような視点を組み入れるのは、決して見当違いでは
ないように思う。
「北の脅威」で想像をたくましくするよりも、現実に日本に存在する法に
よってもたらされるリスクについて、今こそしっかりと議論すべきでは
ないのだろうか。

さらに付言すると、左翼がよく展開している「平和憲法9条こそ抑止力論」は
何の説得力もない、ということも今回の件で実感できるはずである。

北朝鮮のような「ならず者国家が、日本には平和憲法があるから
攻撃しないでおこう、という判断を下すとはさすがに誰も思わないだろう。
自国軍を保有して、自主防衛を可能とするように憲法を改正しないと、
こうした矛盾は永続的に続く。

ただし、改憲は真っ当な保守政権の下でなければ駄目である。
もちろん、安倍政権は論外である。
自主防衛はアメリカから日本が独立するためのものだが、安倍はアメリカに
従属することしか考えていない。
アメリカのために自国民を犠牲にする、という事態に陥りかねない。
現在の自民党自体、以前に発表した改憲草案を一切変更するつもりが
ないようだから、任せられない。
憲法とは何か」について、分かっている人間が少なすぎるので、
真っ当な保守ではないのだ。
結局、改憲はずっと先の話になるだろう。

「北の脅威」について考えてみても、私のような一個人でもこれだけの
論点に思い当たるのだ(的外れのものもあるかもしれないが)。
プロの報道記者ならば、取材内容や専門知識を生かしてもっと深く論点を
掘り下げることが出来るだろう。
目先の視聴率などにとらわれることなく、国民に「考えさせる」
「議論させる」報道を切に求める。

そうでなくては、漠然とした不安が横溢した膠着状態の社会は
一向に改善されないのではないだろうか。