高森明勅『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)

私を含む一般庶民の8割は、天皇陛下の「生前退位」に賛成している。
それを可能にするための恒久法の制定にも賛成している。
普通に天皇や皇室を敬うのであれば、こうした感覚になる。
庶民は専門的知識を持ち得なくても、常識的感覚を備えている。
これこそが、国民が天皇陛下のことを思い、天皇陛下が国民に寄り添う、
という「象徴天皇制」の理想的な形である。


しかし、「私的な知識」を振りかざして、陛下の思いと庶民の感覚を
封じ込めようとする輩が存在する。
「庶民は何も知らないから、判断を誤った"大衆"化する」とばかりに、
それらしい理屈をこねて「私的な思想」の正しさを強調する輩が存在する。
「自分たちの判断こそが正しい」と、陛下にも背く「エセ保守」の連中だ。


そうした流れの中で出版されたのが本書である。

高森明勅先生は、神道学者であり皇室研究家である。
天皇に関する著書も多い。
真正な尊皇派として影響力のある専門家の一人である。


本書において高森先生は、以下の2点に重きを置いたと思われる。
1)庶民に皇室についての専門知識を分かりやすく解説する
2)皇室典範改正草案を具体的に示し、手続きが困難ではないことを証明する

こういった内容を読む事により、我々庶民は常識的な感覚に理論的根拠を
得ることが出来るのだ。


普段はブログで毒を吐く事もある高森先生だが、本書では感情的な表現は
極限にまで抑えられている。
皇室の歴史、日本国憲法皇室典範、そして陛下の「お言葉」といった
客観的事実に即し、どういった判断が合理的かつ理性的かという見解を
述べる事に徹している。
加えて、法律の専門家でもないのに皇室典範改正草案を作り上げた
というのは、いわば実証主義ということになるだろう。
「たったこれだけの改正で充分」と、自ら叩き台を示してみせたのだ。


果たして本書の内容に対して、「エセ保守」は反論できるのだろうか。
憲法に抵触する」「権威が二分化する」「強制退位が可能になる」
「歴史的に混乱した時期がある」といった連中の主張を、
高森先生はとごとく摘み取ってしまっている。
憲法学者やジャーナリストら「皇室専門外」の人間は、本書が提示した
客観的事実をどのように捉えるのか。

庶民は本書のおかげで連中よりもきちんとした専門知識を得たから、
従来の自説を強弁しても偽りだらけだと見抜かれてしまう。


また、皇室典範改正には「時間がかかる」「リスクが高い」と判断した
政治家や有識者の連中は、当然ながら本書の草案に対して何らかのコメントを
出さなければならない。

恐らく現時点では唯一と思われる草案を無視してしまうのならば、
庶民は「陛下の思いを叶えようとしない怠慢な行動」と判断する。


本書が買い求めやすい新書という形式で出版されたのが、何とも嬉しい。
とにかくきちんとした知識を広めたい、という高森先生の意志が感じられる。


まずは「知」の面において、尊皇派からの逆襲が始まった。
次に小林よしのり先生の『天皇論 昭和29年』が出版されれば(2月下旬予定)、
「情」の面も含まれた鉄槌が下される。
両書を得た庶民は完全無欠に近くなるが、それでも「エセ保守」は自説に
こだわり続けることが出来るのだろうか。
自らの誤りに言及せず、のうのうと知識人人生を送ろうとする輩が
存在するとなれば、そうした逆賊は「天皇制反対」を明確に主張する
左翼やリベラルよりも人間的に劣る。