「カジノ法案」最大の問題点

IR整備推進法(通称「カジノ法案」)が何かと論議を呼んでいる。
朴槿恵やトランプなどの今の日本国民にはどうでも良いニュースが
払拭されて、ようやくマスコミでもこの法案の問題点について
取り上げられるようになった。


ただ、論点が一面的であるように思う。
何かと「ギャンブル依存症」と「犯罪の温床化」という風紀や治安の
悪化について懸念する向きが多い。
もちろん、これらも議論の対象となりうるが、ここにこだわってしまうと
自民党の思惑通りになってしまうのではないか。
結局、自民党は「きちんと対策をとる」と言い張っていくだけだから、
水掛け論に終始してしまうのだ。


それよりも大きな問題がある、と私は思う。
この法案、昔ながらのハコ物行政であり、客として外国人観光客を
見込むようになった、というだけにすぎない。


自民党は、この法案が通ればすぐにカジノが出来るわけではない、と
説明する。
あくまで商業施設や宿泊施設を含む「総合リゾート」だという。
ならば、悪評高きリゾート法の21世紀版のようなものではないのか
とりあえずドカンと大きなモノを造れば経済効果が見込まれて、
景気回復に寄与するだろう、という安易な考えである。
造れば造るほど消費が活発化した高度経済成長期やバブル景気の頃と
感覚が変わっていないのではないか。


そもそも、件のIRを建設および運営するのにどれほどに費用がかかるのか、
そしてどれほどの経済効果を見込んでいるのか、全く明らかにされていない。
勘定が分からない法案を簡単に通すわけにはいかないだろう。
現在くすぶっている東京五輪競技場問題をみても分かるように、
利権が絡むとコストはうなぎ登りに膨らむのだ。


しかも、先述したように外国人観光客からの収入をアテにしている。
今年、日本を訪問した外国人観光客は過去最高の2,000万人超えとなったが、
政府は2020年には4,000万人に達する事を目標としている。
そんな外国人特需がいつまで続くと思っているのだろうか。
こういった数字は、為替などの国際情勢でいくらでも変動するものだから、
あくまで「プラスアルファ」の収入としてとらえておくものだろう。


第一、既にカジノを売り物している観光地は海外には他にいくらでも
あるのに、「日本にギャンブルをやりに行こう」と考えるだろうか。
しかも、名乗りを上げている多くの自治体が「空いた土地の有効活用」を
考えているから、やたら交通アクセスの悪いところばかりだ。

大阪などは夢洲の復興を目指しているが、京都や奈良と真逆の方角にあって
地下鉄中央線の西端まで乗らなければならない(延伸予定らしい)エリアに
わざわざギャンブルのために足を運ぶだろうか。
宿泊施設としても関空から不便な場所にあるため、「仕方なくこの場所を
選ぶ」といったレベルではないか。


つまり、破綻する危険性をはらんでいるのだ。


ギャンブル依存症」や「犯罪の温床化」は二の次の問題である。
ここをメインとして考えてしまうと、「この問題さえ克服できれば
法案には何の瑕疵もない」ということになってしまう。

利権にあずかろうと期待する「黒い頭のネズミども」が、手ぐすね引いて
待っている。


日本が好景気ならば、こういった法案は簡単に通ったのかもしれない。
しかし、デフレから全く脱却する事が出来ず、庶民が財布の口を固く
絞っている現在、昔ながらのカンフル剤が効くわけがない。
賢い消費者は、例によって富める者が富むだけだと見抜いてしまうから、
仮に法案が通ってIRが出来てもそんな所に金は落とさない。
ギャンブルをやりたければ、一般的な競馬や宝くじ、あるいは法律上は
「遊戯」扱いであるパチンコを普通に楽しみ続けるだけだろう。


そもそも、日本はいつから観光立国になったのか。
ここ近年の外国人観光客の増加に色気を出しただけではないのか。
日本人が日本の商品を買う、という当たり前の消費活動が置いてけぼりに
されている。

繰り返すが、日本の観光ブームがいつまで続くか誰にも分からないのだから、
景気を安定化させるためには日本人の消費を活発にしなければならないだろう。
その点において何の成果も出ていないのだから、アベノミクスは失敗だった、
と認めなければならない。

そこを直視せずにIR頼みというのは、もはや国政レベルでギャンブラー気質に
陥っているようなものである。


この法案に絡んで、私としては維新の会の動きが許しがたいのだが、
それについては機会があればいずれ書いておこうと思う。