小手先の「法案」ではどうにもならない危険水域!?

昨日の記事で少し触れた「年金改革関連法案」だが、なかなかきな臭い
代物であるようだ。


メインは年金支給額を賃金ベースにするという案だ。
今までは「物価上昇・賃金低下」の際には支給額は据え置きだったが、
法案が可決されて法制化されると賃金低下に合わせて支給額が減少する
ようになる。


野党はこの仕様を指して「年金カット法案」と批判する。
一方で、少子高齢化社会のことを考えると、年金の主な収入源である
賃金をベースにしないと今後は維持できないから、この変更は当然、と
考える向きもある。


私自身、さすがに「年金カット法案」というレッテル貼り戦法は、
昨年の「安保法案」に対する「戦争法案」という歪曲を想起させるので、
いい加減うんざりである。
(注:私は「安保法案」には反対である。ただし、野党の言う「戦争法案」
とは全く異なる立場である。これについては長くなるので、またいずれ。)


ただ、将来の年金制度を左右する重要な法案であるにも関わらず、
マスコミがこの問題を取り上げない

新聞やテレビニュースでは、上述したような法案の概要や骨子について
説明するだけ。
では、高齢者世代、現役世代、若者世代などに対して、今後30年から50年
程度においてどのような影響が生じるのか、全く解説してくれない。
年金の現状がどうなっており、今のままだとこうなる、法案が適用されると
こうなる、という比較考察がないから、ド素人には簡単に判断できない。


すると、どうなるか。
将来に対する不安だけが国民に与えられるのである。


そもそも年金については、第一次安倍政権時代に発生した旧社会保険庁
データ管理ミスに起因する消えた年金問題」というネガティブな前例が
存在する。
当然ながら国民から大きな批判を浴び、安倍は「お腹を壊した」とか言って
政権を放り出し、自民党衆院選で敗北して下野した。
この時点で、常識的な国民は「役所による年金管理は当てにならない」と
学習したはずである。


ところが、「消えた年金問題」はそれだけにとどまらなかった。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による年金積立金の運用損
2016年4月に発覚した。
その額、実に約5兆数千億円
それも勝手に株式運用の比率を50%(日本株式25%、外国株式25%)にまで
引き上げた結果である。


年金のような大事な積立金は、当然ながらローリスクローリターンを
基本とする安定運用でなければならない。
株式運用のようなバクチをしてほしい、など誰も望んではいない。


これについて安倍がどのうような釈明をしているのかは未確認である。
でも、恐らくGRIFに全責任をなすりつけるのだろう、ということは
容易に想像がつく。


しかし、年金運用変更を指示したのは安倍である
自慢の「アベノミクス3本の矢」のひとつである「成長戦略」とやらに
基づいて、2014年のダボス会議で「株式運用の拡大」を宣言している。
主犯は、明らかに安倍晋三なのだ。
共産党の小池書記局長が「消された年金」と表現したのは、
その通りだろう。


役所による杜撰な管理、政府によるバクチ運用という実態を見せつけられて、
今回の「年金改革関連法案」の内容を知った国民が、「ああ、これで
世代間の不公平がなくなり、老後も安心」と感じるだろうか。


安倍は第二次政権を担ってから、「100年先も大丈夫な年金制度を
つくりあげる」と言ってのけた

その結果が、5兆数千億円の巨額損失である。
それを受けて発議された「年金改革関連法案」など、そのまま信頼できる
わけがなかろう。
あの損失がなければ、ここまで急いで法案可決に持っていく必要性など
なかったのではないか?


マスコミが国民目線に立った年金問題をきちんと取り扱わないから、
一般庶民としては「不審なものは、信ずるに値しない」という
感覚でいくしかない。
当然、役所も政府も信用出来ないから、老後を考えるときちんと自分で
貯金しておく必要が出てくる。
人によっては、この低金利では銀行に預けるメリットがないから、
タンス預金に転じるかもしれない。


そうすると、どうなる?
経済が回らなくなるのだ。

消費マインドはますます冷え込む。
「安ければそれでよかろう」という心理ばかりが先行し、付加価値のある
嗜好品や贅沢品の売れ行きが鈍ってしまう。
あらゆる企業がコストカットを強いられるから、行き着く先として
人件費が削減される。
ブラック企業はその体質から用意に脱却できないだろう。
きちんと利益を出せるホワイト企業がどれだけ残ることになるのか
心配になってしまう。


こうなると賃金はやはり下がることになるのだろう。
結婚した夫婦は共働きを余儀なくされる(今や、専業主婦は特権階級である)。
しかし、子育て支援が全く追いついていないから、子供が欲しくても
子作りできない。
早晩、日本の人口は一億を切ってしまう。


……とまあ、続けようと思えばまだまだ続けられるが、私のような
ド素人でもこれぐらいの「負の連鎖」ぐらいは思い浮かぶのである
一応、Eテレの『オイコノミア』という経済エンタメ番組を見ているので、
行動経済学については少しだけ知識がある。
だから、如何に厚労省の役人が、「年金改革関連法案」はこれこれこういう
原理で国民の皆様の生活を安定化させます、と説明したとしても、
全く信用できない。
消費者の行動心理を度外視した経済政策が失敗するのは、
黒田日銀総裁の「異次元緩和」が全く空振りに終わったことで
証明されている。


安倍がアベノミクスにいつまで自信を抱いていられるのかどうか
分からないが、これだけは断言できる。


このままでは、「一億総活躍社会」など実現しない。
何故ならば、社会が先細りになって人口が一億を切ってしまうからだ。

もっとも、その状態になればようやく年金運用は安定するのだろうが……。
そこまで見据えた上での法案ならば、アッパレとしか言いようがない。