小林よしのり・清水克衛『孤独を貫け』(イースト・プレス)

非常に素晴らしい本に出会った。
私はこの本を読んで、リスクを背負う覚悟を抱きながら人生の新しい
ステップに踏み出す勇気を得ることができた。

孤独を貫け

孤独を貫け

告白すると、現在の私は何も仕事をしていない、いわゆるニートという
立場である。
重度の鬱病にかかって会社の退職を余儀なくされ、もう10年以上も
何もしていない。
そのため、すっかり会社人間や会社組織というものに恐怖心を抱くように
なってしまった。
4~5年前辺りから症状は改善されてきて、心療内科の主治医から
社会復帰の準備を促されたが、気持ちが動かなかった。
現状に甘んじて、楽な生活を享受していく方を選んでいたのだ。


そんな堕落した私の目を覚まさせてくれたのが、本書である。
気鋭の漫画家であり思想家でもある小林よしのり氏と
「読書のすすめ」というユニークな書店の店主である清水克衛氏による
対談を収録したもので、薄っぺらい自己啓発本などは及びもつかない
ずっしりとした人生哲学が詰まっている。


特に感銘をうけたのが、以下の文章(本文より引用)。

清水:先生の本の中で、「人間は生産を通じてでなければ付き合えない。
消費は人を孤独に陥れる」という、福田恆存の言葉を知ったときは
感激しました。
小林:子供のときからずっと、消費者であるだけで個だと思い込んで
しまっているんですよ。
本当は生産する場に行かないと、近代的な個なんてできるはずがない。

小林:(前略)
個々の人生にも、世界の中で生きる国家にも、そのまわりには
「リスクしかない」ということですよ。
この世はリスクに満ちあふれているのに、その現実に目を向けさせず、
あたかもリスクなんか存在しない人生が待ち受けているかのように
教えているじゃないですか。
「話し合えばなんとかなる」とかさ。
(後略)

小林:(前略)
現実的なリスクをまったく教わらず、理想ばかり見せる無菌状態の培養器で
育てられたのが、「純粋まっすぐ君」
なんですよ。


このように現実世界のリスクを見据えた上で「個」を確立するには
どうすべきか、というテーマについて様々な角度から論じている。
そして、ネット情報に躍らされるのはやめて、本を読んで自分の思想を
深めることを推奨している。


タイトルの「孤独を貫け」という文句は、自分の頭で物事を考える時間を
作れ、という意味である。
ネット情報が氾濫している世の中なので、意識的に「孤独になる時間」を
作る必要があるのだ。

また、ネットを閲覧してばかりいると、簡単に周囲に流されるように
なってしまう。
何しろ日本人は同調圧力に弱い、と言われるぐらいだから。


私はニート期間中に暇だったということもあって、mixiというSNS
入会してしまった。
すっかりネトウヨ化してしまったのもその時期だ。
しかし、今年の2月頃に匿名発言の醜さに気付いてからは距離を置く
ようになり、4月頃にはすっぱりと退会してしまった。
本を買って読む、という信頼しうる情報を得るための当然の行為
やっと目覚めたのだ。


そうして数ヶ月間に渡って知識を蓄え、自分なりに思想を深めてきた。
本書を読了したのは2週間ほど前だったが、自分の現状について
「このままでは駄目だな」と感じていた時だったので、非常にタイミングが
良かった。


「個」の確立と「公」のために何が出来るかということについて
考えを巡らせていたため、リスクを覚悟した上で生産の現場に身を置くべき、
というメッセージはすとんと腑に落ちた。
そして、己を客観視して「では、どういう現場が自分にとっては現実的か」
と自問自答した結果、「オフィスワークはもう無理だから、体を動かす
仕事が良いだろう」と思った。


そのための練習というかリハビリとして、まずはボランティア活動に
参加してみるつもりでいる。
簡単な仕事内容で、一日で終了するものから始めてみて、少しずつ活動量を
増やしていく。
ひとつの目標点が、最近流行っているらしい農業ボランティアである。
そこで経験を積んで、最終的には農業の現場で体を動かす仕事に就ければ
よいなと思っている。


こうした考え自体は過去に思い浮かんだこともあったが、踏ん切りが
つかなかった。
そんな私の背を押してくれたのが、本書だったのだ。
著者のお二人には感謝してもしきれない。


また、「本を読め」というメッセージを発信しているだけあって、
多くの良書について言及されているのも嬉しい。
例によって、多くの「ネット民」が抱いているであろう「小林よしのり
に対する先入観が覆される、という意味においても読む価値のある本
だと思う。