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有料コンテンツの有用性

私はかつて愚かな「ネット民」であった過去を恥じている。
だから、その反動で信頼しうる情報を自分で得て、自分の頭でしっかりと
考えるようにした。
具体的には、本を読むことである。
ネット上の匿名情報は全く当てにならないので、それらはすっぱりと
断ち切り、書いた人間がわかる著作物のみに接するようにした。
このブログも匿名情報なので、もちろん充分に疑っていただいて構わない。
さすがに無法地帯ともいえるオープンなネットの世界に本名をさらすほどの
勇気はない。


そんな中、先月からネットの有料コンテンツを利用するになった。
ジャーナリストの辛坊治郎氏が配信する辛坊治郎メールマガジン
漫画家の小林よしのり氏が編集長となる小林よしのりライジング」という
2つのメールマガジン、そしてやはり小林氏が主催する「ゴー宣ネット道場」
というニコニコ動画を利用した映像コンテンツである。
いずれも月額300円から500円程度の低価格で、メルマガならば週1回配信、
「ゴー宣ネット道場」は随時更新および過去の映像見放題という内容だ。
いずれもプロの仕事なのだから、下手な週刊誌を買うよりよほどお得である。


特にハマっているのが「ゴー宣ネット道場」だ。
ネットというツールで政治や社会について語るのならばこうあるべし、
という見本である。


簡単に説明してみる。
小林よしのり氏が代表となって、「身を修め、現場で戦う覚悟を作る
公論の場」
として立ち上げられたのが「ゴー宣道場」という討論イベント
である。
小林氏が認めた知識人が「師範」として毎回出席するほかに、
テーマによって外からゲストを呼ぶことがある。
このイベントはもちろん一般公開されており、事前に申し込むことによって
会場で討論に接することができる。
そして会場に来られない人間のために、ネットで映像が公開されている。
それが、「ゴー宣ネット道場」である。


会場への参加もネットでの視聴も有料であるため、本当に真剣に考えたい
という人間以外(要するに荒らしたいだけのような人間)は排除される。
おかげで出席者は議論を深めることだけに集中できるのだ。


面白いのは、小林氏があえて自分とは立場の異なる人間をゲストとして
呼ぶことがある、ということだ。
例えば、「民主主義という病い」というテーマの時には、リベラルに近い
考え方を持つ東浩紀氏が招かれた上、津田大介氏が自ら出席したいと
申し出たのを受け入れている。
あくまで「道場」なので、基本的には参加者や視聴者に「考える力」を
つけることを目的としている。
そのためには議論を尽くすしかない、予定調和の結論を押しつけても駄目だ
と小林氏は考えている。
だから、リベラルや左翼であっても、きちんとした議論のできる
常識ある知識人は歓迎、ということらしい。
その辺が、小林氏の漫画作品としての『ゴーマニズム宣言』シリーズとは
異なる点だ。


また、小林氏自身もなるべく多くの知識人と接して「勉強しよう」とする
姿勢が見て取れる。
そりゃもちろん、特定の分野において集中的に取材をしたジャーナリスト
などには、知識の点でかなうはずがない。
つまり、「ゴーマニズム」とは裏腹に、実は小林氏は「謙虚」な人物なのだ。
実際、そうでないと自分の思想を深めることは、絶対にできないと思う。
こういったメッセージも、参加者や視聴者に大きな影響を与えている。


そして、ここまで議論に特化した長時間のコンテンツ(例えば「民主主義
という病い」は約4時間近くに及ぶ)は、少なくとも民法地上波では
不可能だ。
朝まで生テレビ』が今でも月一で放送されているのは貴重だが、
あちらは出席者が多人数であるため、場の雰囲気が『ゴー宣道場』とは
大きく異なる。
テレビ慣れしている人間が議論を支配してしまう、という事態も
起こりやすい。
その点は、内容があまりに地味すぎると民放の番組としては成立しない、
という事情があるのだろう。
だから、テレビで時事について考えるのは程々にしておいて、
こうして有料コンテンツの方を選択したのだ。


あと、『ゴー宣ネット道場』にはその他のプログラムも含まれている。
前述した「師範」が、それぞれ単独で出演したり対談したりして、
あらゆるテーマについて考えていく、といく内容だ。
こちらは1本30分程度という時間尺なので、気軽に楽しむことができる。


とりあえず見たのは、
ゆきりん・もくれんの淑女我報』の「ここが変だよ!男系カルト」と、
笹幸恵の軍事トリビアの「大本営ってなあに?」。
前者は、現在問題となっている「皇室典範改正」について、男系・男性に
固執する自称保守派をぶった切り、彼らが崇め奉っているY染色体って
こんなもんだよ、とシニカルに笑う内容。
笹幸恵(ささ・ゆきえ)氏と泉木蘭(いずみ・もくれん)氏という
「とがった女性」2人による対談だ。
後者は笹幸恵氏の単独出演で、かつての日本軍についての基礎知識を
講義してくれる、というもの。


これ、それぞれ女性が出演しているから楽しめたのかな、という気はする。
男系・男性をありがたがる血統原理主義者(主に男性)の気色悪さを
感覚的に伝えられるのは女性の方だろうし、日本軍について男性の
軍事評論家がクソまじめな顔して解説していたら見る気がしない。


以前にも書いたが、もう明らかに時代は変わっており、「左翼」や「右翼」
という立場を守りながら言論する人間は取り残されている。

庶民あるいは国民として当たり前の感覚を、周囲に流されずに「個」として
貫いていけるかどうかがポイントだ。
そのためには自力で知識を得て、自分の頭で考えなければならない。
つまり、信頼しうる情報に対価を払う、という本来は当たり前とも言える
行為を経ないと、このご時世ではネットの毒に冒されてしまうのだろう

と思う。